【5月16日付編集日記】「花の力」

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 5年前の2011年5月、郡山市の避難所で記録用の写真撮影を依頼された彼は、カメラを持っているだけで、避難してきた人たちから拒絶された

 ▼震災と原発事故に翻弄(ほんろう)され、プライバシーも守られない避難所生活で、精神的に追いつめられた人たちのことを考えれば、無理もなかった。そんな人たちが笑顔を見せたのは、彼が花を持ち込んだときだった

 ▼ヒマワリやグラジオラス。それらの花々を中心にして、避難所の人たちの間に、うちの庭で咲いた花は、近くの畦(あぜ)にはこんな花が―と、花の会話が広がっていった。彼は確信した。「つらいときだからこそ、花が必要だ」

 ▼彼とは、写真家の野口勝宏さん(郡山市)。以来、身近な「福島の花」を撮り続け、作品を国内外に発信している。被災地の人たちと花のアートを作る活動も続けている。「心を動かす花の力で、人を元気にしたい」と思うからだ

 ▼機体に野口さんの作品があしらわれた全日本空輸(ANA)の特別機「フラワージェット」が国内線に就航した。本県をはじめ東北6県に咲く花々のデザインに「震災を風化させない」との意味が込められている。花の飛行機が全国の空を飛ぶ。東北の元気と希望を届けてほしい。