【6月7日付編集日記】初物

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 「初物を食うと寿命が75日延びる」との考えから、江戸の人々が初物好きだったことはよく知られる。特に初ガツオには熱狂した。1812(文化9)年には歌舞伎スターの三代目中村歌右衛門が初ガツオ1本に3両の大枚をはたき買ったと伝わる

 ▼きのうカツオが小名浜漁港に今年初めて水揚げされた。今年は例年より半月ほど遅れての到着となった。地元に届く新鮮な味覚を待ち兼ねていた人も多いだろう。初夏は港が活気にあふれる季節だ

 ▼相馬市など相双沖では先週、ホッキ貝の試験操業が始まった。ホッキ貝は原発事故の影響で漁の自粛が続いていた。5年5カ月ぶりの漁再開は、国内有数のホッキ貝の漁場だった相双沖の復活に向けた大きな一歩となる

 ▼「震災後の初物」となったホッキ貝は、やはり多くの人が待ちわびていたようだ。初水揚げの翌日に市内の水産加工施設で販売したところ、300キロが開店15分で売り切れたという。久しぶりにホッキご飯や刺し身に舌鼓を打った人もいただろう

 ▼本県漁業の復興が徐々に進んでいる。漁業関係者らが、漁の自粛や風評を乗り越えて届けてくれる海の恵みだ。その価値は計り知れない。滋味をかみしめれば、生きる力になる。