【6月20日付編集日記】「かえる かわうち」

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 広葉樹の林の中を歩いて行くと、神秘的な沼が突然、姿を現す。川内村の平伏(へぶす)山(842メートル)山頂に位置する平伏沼だ。モリアオガエルが繁殖する国指定天然記念物で、「カエルの詩人」といわれた草野心平が愛した地としても知られる

 ▼モリアオガエルは産卵の仕方が特徴的だ。沼にせり出すように生えている木の枝や葉に白い泡状の卵を産み付ける。卵が孵化(ふか)すると沼に落ち、オタマジャクシが水中で暮らし始める

 ▼これから7月上旬にかけてが産卵のピークだが、沼の巡視員をする猪狩四朗さんによると、今年は卵の数が例年の半分ほどしかないという。「水不足でもあるが、原因は分からない」。村のシンボルであるカエルのことを思い、心配そうだ

 ▼壁をよじ登るカエルのイラストに、「かえる かわうち」とのキャッチコピーを添えた垂れ幕が2012年の春、村役場に掲げられた。原発事故で一時は全村避難を強いられた同村に役場機能が戻った時期のことだ。村は先週、全ての避難区域が解除された

 ▼現在までに帰ってきた住民は65%ほどという。復興への壁はまだ高いが、「これからカエルが戻り大合唱を聞かせてくれるはず」との猪狩さんの言葉に村の未来を重ねたい。