【6月26日付編集日記】1冊の本

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 相馬野馬追が近づいてきた。会場の南相馬市・雲雀ケ原祭場地などでは震災と原発事故で避難を強いられながら、1000年余りの伝統を守る騎馬武者たちが馬を操り、準備が進む

 ▼開催を楽しみに待つ関係者に1冊の本が届いた。本には色鉛筆で描かれたスケッチが収められ、野馬追の神旗争奪戦や甲冑(かっちゅう)競馬など、勇壮な騎馬武者の姿が生き生きと表現されている

 ▼本を贈ったのは、秋田市に住む太田清さん(62)。太田さんは2001年8月から3年間、浪江町の東北電力浪江小高原子力準備本部で働きながら、同町や同市小高区の身近な風景をスケッチに描いた。震災後、親しんだ風景が津波で失われたと知り、野馬追など地域の祭りを描き足し、1冊にまとめた

 ▼その小高区は、野馬追開催前の7月12日に避難指示が解除される。解除を受け、野馬追で凱旋(がいせん)する騎馬を迎えるかがり火をともしたのが由来とされる「火の祭」も同24日、6年ぶりに復活する

 ▼太田さんは本に「福島を忘れていない」との思いを込めた。避難から5年余り。自宅に戻る小高区の人々にとっては、止まった時計の針がようやく動きだす。不安もあるだろうが大勢の人の応援がある。そして温かい古里が待っている。