【8月11日付編集日記】帰省ラッシュ

(数字はいいね)  このエントリーをはてなブックマークに追加 

 奉公に出した息子が3年ぶりに帰ってくる前夜、父親はうれしくて眠れない。「帰ったら好きな納豆を食べさせてやろう。それと刺し身に天ぷら、ウナギ、汁粉にぼた餅も」。妻は「そんなに食べさせたら腹を壊すよ」とたしなめる

▼父親はさらに「明日は息子と浅草参りして、ついでに日光、松島を回り、舟に乗って加賀やお伊勢様、京都見物にも連れて行こう」などとむちゃなプランを考えて、ますます眠れない。息子を待ちきれず、妻に何度も時間を尋ねては「お天道様が寝坊してるんじゃないか」と不思議がる

▼落語の「やぶ入り」の一幕だ。やぶ入りとは、住み込みの奉公人や嫁いだ娘が年2回だけ実家に帰ることができた昔の風習で、お盆と正月の休暇のルーツといわれる

▼きょうから、お盆の帰省ラッシュが本格化すると予想されている。離れて暮らしている子どもや孫たちを待ちわびて、落語に登場した父親のような気持ちでいる人が多いのではないだろうか

▼手作り料理が勢ぞろいの食卓を囲み、互いに近況を報告し合う。そんなひとときは離れていた時間を一気に取り戻してくれる。「明日のお天道様にはすこし寝坊してもらいたい」。そう願いながら夜が更けていく。