【8月12日付編集日記】竹久夢二の夏

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 この時期、夏休みを温泉で過ごす読者もおられるだろう。画家で詩人の竹久夢二も、95年前の1921(大正10)年8月の約1カ月、会津若松市の東山温泉で夏を満喫した

 ▼夢二は旅館に逗留(とうりゅう)し美人画などを描き、夜はお座敷遊び。芸妓(げいぎ)見習いの少女を阿賀川河畔の料理屋に誘ったりもしている。しかし少女は約束の時刻に現れず、作家は月見草が咲き乱れる河原をひたすら写生していたという(会津史談第56号、坂井正喜「夢二と会津」)

 ▼明治安田生命の調査では、今年の夏休みの平均取得日数は、昨年に比べ0・8日増えて8・9日。「山の日」(8月11日)の祝日化の影響とみられる。しかし、5年前と比べると0・6日短く、夏休みゼロの人も12・4%を占める

 ▼夢二のような、ゆったりとした夏のバカンスは、まさに夢。そんな嘆息が聞こえてきそうだが、逆に彼の逸話は、休みが、ただ長ければいいわけではない―との示唆も含んでいる

 ▼月見草は、夜に花が開き、朝にはしぼむ一夜限りの花。夢二は、少女との切ない記憶と、月見草のはかないイメージとを重ねて、後に流行歌としてヒットする「宵待草」の詩を書いた―との説がある。きらめくような一瞬を探す夏もいい。