【10月29日付編集日記】復興のかかし

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 楢葉町の双葉署臨時庁舎に今月下旬、頼もしい新人が入った。任務は、なりすまし詐欺や自転車盗など、町民に身近な事件の被害防止だ。スーツを着て庁舎入り口のいすに座り、啓発チラシを張ったボードを手に注意を呼び掛けている

 ▼彼の正体は、等身大のかかしだ。町の復興を支援する町民有志でつくる「なにかし隊」のメンバーらが作った。「単にチラシを掲示板に張るより、来庁者に注目してもらえる」と同署が要望し、提供してもらった。同署のほか、町内の金融機関3カ所にも設置した

 ▼同隊のメンバーは5月、まちおこしの参考にしようと、かかしを活用して地域振興に取り組む徳島県三好市を訪れた。現地でかかしの作り方を教わり、町に戻ってからは町民にも広めた

 ▼これまでに完成したかかしは26体。町民から寄せられた古着を着て、その表情は実に豊かだ。町内のイベントで展示したほか、デイサービスセンターなどにも飾り、利用者に笑顔を届けている

 ▼町は昨年、避難指示が解除されたが、帰還した住民はいまも1割弱にとどまる。メンバーらは「たくさんのかかしを作って町をにぎやかにし、戻ってくる住民を出迎えたい」と話す。熱い思いが、かかしに宿る。