【11月13日付編集日記】格好いい大人

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 東京・渋谷の映画館で後ろから肩をたたかれた。振り返ると、俳優の渥美清さんから「先ほどは失礼しました。今、時間があるので質問したいことがあればどうぞ」と声を掛けられた

 ▼約30年前、東京国際映画祭を取材した時の出来事だ。「男はつらいよ」で知られる名優・渥美さんは一観客として来場し、高校生に話し掛けていた。その場に居合わせ、声を掛けるとすぐに映画が始まるブザーが鳴り、渥美さんは「失礼」と言って館内へ消えた

 ▼話を聞けずに残念と思ったが、映画が終わってから渥美さんに出口で呼び止められ、思わぬ形で取材ができた。「若い人がどんな映画に興味があるのか聞いてました。映画の未来は若者次第だからね」。紳士的な応対に感激した

 ▼今年の日本映画界は、ゴジラを新しい視点で描いた庵野秀明監督の「シン・ゴジラ」や、社会現象にもなっている新海誠監督の「君の名は。」などが大ヒットし、新しい流れを感じた

 ▼渥美さんが言った通り、若者が支持して広がったのだろう。映画や小説は、まったく自分とは違う人生を疑似体験できる。若い時にたくさんの映画や小説に触れてほしい。きっと渥美さんのような格好いい大人になることができる。