【11月16日付編集日記】武田惣角

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 大東流合気柔術で知られる会津坂下町出身の武田惣角は、もともと剣術家を志していた。明治時代初期、強者(つわもの)ぞろいの剣術の世界で武田が頭角を現すまでの努力は並大抵ではなかっただろう

 ▼武田は東京、九州でも修行し剣術を磨いた。修験道や柔術などの技も習得し、独自の合気柔術を編み出した。武田と合気を研究する郡山市の作家池月映さんは著書で「偉大な武術家、故郷会津の偉人として評価されるべき」と記した

 ▼池月さんの歴史小説「合気の武田惣角―武蔵を超えた男」(歴史春秋社)が日本点字図書館により録音図書としてCD化され、ネット配信されている。デジタル音声で7時間45分。本県出身の偉人を描いた小説では野口英世、松江豊寿らに次ぐCD化という

 ▼小説では困難を乗り越え、武術に打ち込みながら目の不自由な妹を思いやる武田と、兄を慕う健気(けなげ)な妹の姿が描かれた。読むほどに胸が熱くなる

 ▼小説は、超人的武術家と評される武田の実像に迫り、支える周囲の人たちと触れ合う心の温かさがにじむ。きっと視覚障害者らを勇気づけてくれるだろう。家族を思いながら武術の道を突き進んだ足跡が多くの人への励ましとなることは同じ県民として誇りだ。