【11月23日付編集日記】つり橋

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 地震列島である日本について、物理学者の寺田寅彦は「国土全体が一つのつり橋の上にかかっているようなもの」と例えている。東日本大震災から熊本や鳥取を経て、そして再び本県へ。つり橋の揺れは、いまも収まってはいないようだ

 ▼「天災は忘れたころにやってくる」も寺田の言葉とされているが、忘れていなくても、多くの人がまだ暖かい布団の中にいる時間帯の「グラッ」だ。驚かなかったという人はいないだろう

 ▼沿岸部に津波警報が出され、高台や避難所へと急ぐ住民たち。福島第2原発のトラブルや、火災が発生した事業所もあった。5年8カ月前の記憶が生々しくよみがえってきた

 ▼しかし現場では、東日本大震災後に導入した防災メールを活用して避難を促す自治体や、災害に備えてあらかじめ用意していた荷物を持って避難する住民の姿も見られた。未曽有の大震災を乗り越えた経験が生かされてきている

 ▼寺田は、人間の力では地震を避けることはできないとする一方で、「『災害』のほうは注意次第でどんなにでも軽減されうる」と説く。知識と技術を積み上げていけば、揺れるつり橋も安全に渡ることができるはず。被災地の経験を生かす余地はたくさんある。