【11月25日付編集日記】水増し

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 本紙連載中の小説「秀吉の活」では、のちに豊臣秀吉となる主人公藤吉郎の義父が、水で割った酒を飲む場面が出てくる。藤吉郎の生まれの貧しさが分かる描写だ

 ▼ただ酒の歴史を見ると、酒を水で割るのは貧しいだけが理由ではない。坂口謹一郎著「日本の酒」などによると江戸時代は酒蔵から出荷された原酒に流通の段階で水が加えられるのは普通だった

 ▼酒質を判別し飲みやすく濃度を調整することを「玉をきかす」といい、消費者の間では「玉のきいた酒」が評判になった。一方売り手には「割りのきく」(薄めても効果がある)酒が、もうけになると喜ばれた

 ▼「水割り」を持ち上げすぎたが、「水増し」は別だ。先の県の企業立地補助金などの不正受給事件は、3企業が経費を水増しした書類を作り復興財源から捻出した計6億円以上を不正に受け取っていた。被災地を食い物にする行為だ

 ▼実は、酒にも水増しが横行したことがある。戦争で酒米の使用量が国に制限された昭和10年代金魚が泳ぐほど薄い「金魚酒」が出現。これを規制するため初めてアルコール濃度が法制化された。坂口氏はこの規制で「酒の自由な特徴が殺された」と記す。欲が過ぎればろくなことはない。