【11月30日付編集日記】ツツジ伐採

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 奈良時代の万葉歌人高橋虫麻呂は、京から地方に赴任する公卿へのはなむけとして長歌の中に「丹つつじのにほはむ時の 桜花咲きなむ時に 山たづの迎へ参ゐ出む 君が来まさば」と詠んだ。公卿の帰りを待ちわびる思いを込めたのだろう

 ▼筑波大教授を務め、万葉集研究で知られた伊藤博さんは、長歌にあるツツジ、サクラが咲く光景を「春の花の色美しさを描くことによって、めでたい帰還を先取りしたいというのが虫麻呂の心であっただろう」(萬葉集釋注三)と解説した

 ▼訪れる人の心を和ませていた富岡町のJR常磐線夜ノ森駅のツツジが除染工事で伐採されることになった。ツツジは除染方法が確立されておらず、放射線量が高いため別の場所への移植も困難との判断だ

 ▼ツツジは町の花で、シンボルの一つ。町議から伐採反対の意見が相次いだ。町が受け入れた計画では伐採後も根は残して枝を育て、駅ホームに面する場所には花壇を設け、ツツジの再生を図るという

 ▼根から育てて花が咲くまで約5年はかかるらしい。夜の森の桜並木とともに町民の心のよりどころになってきた駅のツツジが枝を伸ばして再び花を咲かせるように、復興への歩みを着実に進めていきたい。