【12月6日付編集日記】お地蔵さん

  このエントリーをはてなブックマークに追加 

 鎌倉時代の説話集「宇治拾遺物語」にこんな話がある。比叡山に戒律を破っても恥とも思わない僧がいた。ただ僧は、寺の近くに立っていた古い地蔵をときどき拝んでいた。僧は亡くなり無間地獄に落ちたが、地蔵が地獄に現れて炎に足を焼かれながらも助け出してくれた

 ▼菩薩(ぼさつ)の一つである地蔵への信仰が広がったのは平安時代後期という。仏教が浸透するのにつれ、庶民の間では地獄を恐れる風潮が強まった。そのため人々は、たとえ地獄に落ちた人ですら救済してくれるという地蔵に救いを求めた

 ▼地蔵像はいまでも、寺の参道や道端など、さまざまな場所で見ることができる。中島村の「汗かき地蔵」や二本松市の「万人子守地蔵尊」のように言い伝えの残る地蔵も多い。それだけ人々の生活に身近な存在だったということだろう

 ▼須賀川、郡山両市の墓地や寺社で、石製の地蔵像などが相次いで壊された。台座から倒されたり、頭部が胴体から取られたりしていた。中には、指の部分だけが集中して壊された像もあった。その姿が痛々しい。警察は器物損壊容疑で捜査中だ

 ▼いったい、誰が何のためにやったのか。心優しいお地蔵さんも犯人の所業を憂い、泣いているに違いない。