【12月8日付編集日記】真珠湾攻撃75年

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 日本文学研究者のドナルド・キーンさんが初めて日本文化に触れたのは、ニューヨークの書店で手にした「源氏物語」の英訳本だった。米コロンビア大の学生だった1940年のことだと、自伝に書いている

 ▼ドイツ軍がオランダやフランスに侵攻し、英国への空襲も始まった時期のことだ。不安な日々を送っていたキーンさんは暴力や戦争のない源氏物語の世界に魅了され、夢中でページを開いたという

 ▼キーンさんは翌年、大学の「日本思想史」の授業で生涯の師と出会う。旧制福島中の教壇に立ち、その後、渡米して日本文化の紹介に生涯を尽くした角田柳作さんだ。受講生はキーンさん一人だけだったが、角田さんの指導は非常に熱心だった。しかし先の大戦が勃発。角田さんは一時、敵国人として強制収容された

 ▼戦後、大学に戻ったキーンさんは、日米どちらが勝っていたとしても、角田さんの心は晴れなかっただろうと考えた。それは角田さんが「二つの国を愛する人間」だったからだ

 ▼旧日本軍によるハワイ真珠湾攻撃から、きょうで75年がたった。今月下旬には安倍晋三首相が現地を訪ねる。平和を願う気持ちに国境の壁は存在しない。両国民が、その思いを共有したい。