【3月8日付編集日記】空き家

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 俳人の種田山頭火が「いつも空家のこぼれ菜の花」と詠んだのは現在の山口市にあった空き家を借り、其中庵と名付けて暮らした84年前の3月だった。放浪の旅から落ち着く家を見つけても、旅は続けたらしい

 ▼四国遍路の旅では、「気のつくのは空家が多いこと」と道すがら目にした光景を日記に書いている。安宿に身を寄せる質素な旅でも、うら寂しい空き家が目立つ町並みは物足りなかったのだろう

 ▼山頭火の時代は不況などが原因で空き家が増えたという。現在は人口減少や家屋の老朽化など事情は複雑だ。増える空き家の活用を目指し政府は新年度に空き家登録制度を設け、高齢者や子育て世帯向け賃貸住宅用に提供するなど対策に力を入れる

 ▼県内各地でも空き家対策に知恵を絞る中、白河市は新年度から改修した空き家に短期滞在してもらう「お試し居住」を始める。市外の人の移住や市内外に生活拠点を構える二地域居住につなげる考えだ

 ▼山頭火が庵に住んで半年後の日記に「住みなれてふきのとう」との句がある。日記に残した地元の人との温かな交流には居心地のいい地域の姿がにじむ。新たな安住の地を求める人には家とともに心和む人との出会いも大切のようだ。