【3月10日付編集日記】信じる気持ち

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 芸術家の岡本太郎さんは、人生で2度絵画を前に涙を流したという。いずれもパリにいた20歳前後の頃。セザンヌとピカソの作品に、それぞれ心を揺り動かされ、創作者として道を歩み始めた

 ▼天才を引き合いにするのはおこがましいが小欄も先日、県立美術館で、ある絵画に引き付けられた。描かれていたのは月光に照らされた山並みと麓の街。それが、どこか福島盆地の夜景の温かさに重なって見えた

 ▼作品は、山形県出身の日本画家福王寺法林さんの「バドガオンの月」。ネパールの古都をヘリコプターで上空から眺め描いた大作だ。山並みの迫力は、なるほどヒマラヤ。「福島ではないのか」と頭をかくと、学芸員が「でも福島の子どもたちには人気の作品」と言う

 ▼同美術館で12日まで開かれている展覧会「ギャラリーF」は多くの収蔵品を再発見する試み。福島四中の生徒らがいくつかのテーマごとに選んだ作品の展示も行われ「バドガオンの月」はその1点

 ▼企画に際し生徒らは作者も題名も知らず「信じる気持ち」をテーマに、この作品を選んだ。盆地の中で肩を寄せ合う家々に絆を感じたのだろうか。不思議な共感とともに、若い感性が真っすぐに育ってほしいと思った。