【3月11日付編集日記】震災6年

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 「私たちはどうしたら『自分の言葉』を持てるのでしょうか」。作家の古川日出男さんは震災後、故郷の郡山市で開いた復興支援イベントで会場に問いかけた。震災のショックで自分の思いを言葉にすることを難しく感じている人が多かったためだ

 ▼時を経てようやく言葉にできることもある。いわき市に住む元郵便局長の男性は一昨年の夏、妻が営む喫茶店の前にポストを置いた。震災で亡くなった大切な人への手紙を入れてもらおうと考え、「天国ポスト」と名付けた

 ▼多くはないが、今でも手紙を持った人が訪れる。千葉県から来た若いカップルは、津波で亡くなった祖母宛てに「ありがとう」と手紙に書いた。幼い子どもが出したのだろうか、人とハートの絵が描かれたはがきがポストに入っていたこともあった

 ▼ポストを置いた男性は、投函(とうかん)しに来た人を見かけても声を掛けない。帰って行く後ろ姿を離れた所から見送るだけだ。「胸のつかえがおりたのか、穏やかな表情の人が多い」のが喜びだ

 ▼東日本大震災と原発事故から6年。思いを素直に言葉にできた人がいれば、まだできないという人もいる。時は確かに刻まれている。いつかは思いを言葉にすることができるはずだ。