【3月19日付編集日記】浪江のコウナゴ漁

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 コウナゴの天日干しは、相双地方に春の到来を告げる風物詩だった。東日本大震災と原発事故前まで、浪江町の請戸漁港近くの水産加工会社の軒先では春の日差しを浴びながら、家族総出で、コウナゴの天日干しに追われる姿があった

 ▼コウナゴはかき揚げなど旬の料理として食卓を彩った。「天日と潮風にさらすことでまろやかな味と色つやが生まれるんだよ」。水産加工会社の社長から聞いた言葉はコウナゴの天日干しの情景とともに色あせない

 ▼請戸漁港に震災と原発事故後初めてコウナゴが水揚げされた。避難生活をしている間も諦めず、ずっと出漁を待ち続けていた漁業者の胸中を思うと胸が熱くなる

 ▼コウナゴは、避難生活を送る町民の食卓にも届き勇気づける。初日の水揚げは約890キロで復活への第一歩にすぎないが、6年ぶりに出漁し、コウナゴを漁獲した漁業者や水産加工会社の人たちにとっては生活再建に向けた大きな一歩に違いない

 ▼浪江町は31日、帰還困難区域を除いて避難指示が解除される。未曽有の災害の傷痕は癒えないが、4月には大半の町職員が本庁舎に戻り、帰還を目指す町民らの生活ニーズに応える。春の足音とともに、復興の足音が近づいている。