【3月31日付編集日記】雪村

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 元東京学芸大教授の小川知二さんは茨城県立歴史館で主任研究員を務めていた25年ほど前、同館が主催する特別展の打ち合わせで困惑した

 ▼予算案や資料を持って行くと、予算を握る茨城県の担当者が「ユキムラって誰のこと? 特別展を開くほど有名な画家なの?」と聞く。「ユキムラ」と言われたのは戦国時代の水墨画家で、晩年を三春や会津で送った雪村。ただし「セッソン」が正しい

 ▼すると、小川さんは「水戸出身の横山大観は国指定の重要文化財が2件だけ。それに対しセッソンは6件もある」など「かなり珍妙な」返答をしたと自著「もっと知りたい雪村」に書いている

 ▼自虐も込め権威主義を笑い飛ばした話だが、「ユキムラ」レベルのわが身を顧みると笑えない。ただ小川さんは風変わりなほど個性的で親しみやすい雪村の絵は権威も知識も関係なく「見ることからすべてが始まる」と言う

 ▼現在、東京・上野の東京芸術大学大学美術館では回顧展「雪村―奇想の誕生」が開かれ三春時代の作「蔬果(そか)図」も展示されている。4月10日からは三春町歴史民俗資料館で所蔵作「奔馬図」などの展示も始まる。このうち重要文化財は―などとヤボは言わず楽しんでみようと思う。