【6月9日付編集日記】オキナグサ

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 野に咲くオキナグサ。名前の由来は種から伸びる白くて長い綿毛だそうだ。白髪のような姿を、年配の男性を指す「翁(おきな)」の頭やひげにたとえたというから面白い

 ▼だが、これには異論もあるようだ。詩人、童話作家の宮沢賢治は童話「おきなぐさ」の中で「何だかあのやさしい若い花をあらはさないやうに思います」とする。賢治の故郷岩手では「うずのしゅげ」。これもひげに由来するようではあるが

 ▼会津美里町大石地区の阿賀川堤防では、オキナグサを守る会や地元住民の保全活動が進む。かつては数多く自生していたが激減し、現在はふくしまレッドデータブックの準絶滅危惧種。日当たりが大好きだが周囲の荒廃で日影に隠れがちなことや栽培目的の採取が原因とされる

 ▼オキナグサを守る会は、春に地元の子どもたちと種を採取して苗を育て、秋に堤防に植え替える作業を約15年続ける。春には賢治が「変わり型のコップのよう」と表した赤紫色で鐘形の花が咲き、昔の堤防の姿が戻りつつある

 ▼賢治の童話は風で綿毛が飛ぶ様子を「星が砕けて散るときのように」と美しく表現する。オキナグサの命が綿毛に託され、各地に飛び散ると想像すれば、花がなおもいとおしくなる。