【9月13日付編集日記】天田愚庵

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 いわき市出身の歌人、天田愚庵は明治という激動の時代を縦横無尽に生きた人だ。武家に生まれながらも、のちに出家し近代短歌の先駆けともなった。しかし今は、その人物像を詳しく知る人は少ないかもしれない

 ▼愚庵の波瀾(はらん)万丈の人生は戊辰戦争から始まる。磐城平藩士の息子として15歳で参戦したが、戦いでは家族と生き別れた。その家族を捜す旅の途中で東海道の大親分・清水次郎長の養子になり富士の裾野の開墾に携わった

 ▼歌人としては1600キロに及ぶ西国巡礼にも出かけ、代表作である「順礼日記」を発表。暮らしの中の感動や実感をありのまま詠む万葉調の歌に脚光を当てた。その歌風は交友があった正岡子規を刺激し、短歌の革新運動に影響を与えたという(「天田愚庵」高藤武馬著)

 ▼古里のいわき市では、市民有志による顕彰会が史実を基に51年の生涯をまとめた小説を刊行した。子どもたちに愚庵を知ってほしいと市内39の中学校と図書館に小説を寄贈した。高校にも贈る

 ▼愚庵は生涯にわたり高潔な志を貫き、優れた知人や友人に恵まれたという。来年は戊辰戦争から150年。地域の歴史を見つめ直すだけでなく、古里の偉人から生き方を学ぶ機会でもある。