【9月15日付編集日記】山国の宝

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 駒、蝋(ろう)、熊、漆。おまじないの文句ではない。江戸時代、奥会津から領外への持ち出しが制限された「留物(とめもの)」と言われる品物の一部だ

 ▼駒は、荷役や農耕に使う馬。熊は、毛皮が取引された。多くは会津地方の特産品。こうした領外で高く売れる貴重品の密輸を国境で役人が目を光らせた。同様の規制は各地にあったが、会津の留物には山国ならではの多彩さがある

 ▼越後とを結ぶ峠道「八十里越」の登り口の村、叶津(現只見町叶津)で代々名主を務めた長谷部家の文書には留物26件が記されている。会津藩が特産化した漆や蝋のほか武士がタカ狩りのため飼育した巣鷹(タカのひな)、銅などの鉱業製品もある。その多様さはまさに宝の山だ

 ▼こうした奥会津の風物を伝える県重要文化財「長谷部家文書」の展示が、福島市の県歴史資料館で始まった。6年前の水害で一部不通になったJR只見線が、2021年にも全線復旧することが決まったのに合わせて、沿線地域を応援する企画でもある

 ▼山国の自然は厳しく、今も過疎の悩みを抱える。ただ、いつの時も先人は、自然の中に資源を探し富に変えてきた。そんな先人の記録には、地域振興を考えるヒントが見つかるかもしれない。