【10月15日付編集日記】中原中也の思い

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 「汚れつちまつた悲しみに今日も小雪の降りかかる...」。中原中也の詩集「山羊の歌」に収録された代表的な作品だ。30年の短い生涯だった中也だが、その叙情あふれる描写は、日本の近代詩の歴史に大きな足跡を残した

 ▼「山羊の歌」は中也が生前に刊行した唯一の詩集で、装丁は高村光太郎が担当した。二人の仲介をしたのはいわき市出身の詩人、草野心平だったという。刊行したのはわずか200冊だが、そのうちの1冊は郡山市で少年期を過ごした作家の久米正雄に贈られている

 ▼本県ゆかりの文学者たちと深いつながりがある中也はことし生誕110年、没後80年を迎えた。その節目に合わせて郡山市のこおりやま文学の森資料館で中也の生涯をたどる企画展が開かれている

 ▼会場には自筆の原稿や日記のほか本人が着用していた丹前も展示されている。「僕の運勢は晩年はいいようですよ」と記された手紙は、病で亡くなる約1カ月前に母親にあてたものだ。字をたどりながら詩人の胸中に思いをはせた

 ▼福島市の詩人で、中原中也賞を受賞した和合亮一さんも中也の作品に影響を受けたという。中也のほとばしるような情熱が込められた詩は今も、読む者を魅了し続けている。