【11月2日付編集日記】越冬つばめ

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 「季節そむいた 冬のつばめよ 吹雪に打たれりゃ 寒かろに」。森昌子さんの代表曲「越冬つばめ」の一節。ヒュルリ ヒュルリララの歌詞でもおなじみだ

 ▼報われない女心を取り上げた曲と思われがちだが、違う。作詞したのは会津若松市出身の石原信一さん。ビューティ・ペアの「かけめぐる青春」や太川陽介さんの「Lui―Lui」も手掛けた

 ▼故郷の会津若松市で講演した石原さんが「実はベースの物語がある」と明かした。アイルランドの文人オスカー・ワイルドの短編小説「幸福な王子」。町の中心部にそびえる王子像があちこち飛び回り、さまざまな話をしてくれるツバメの助けを借りて貧しい人に自分の体を覆う金箔(きんぱく)や宝石を与える

 ▼最後は、金箔が剥がれてみすぼらしい姿になった王子像と、南に渡れず凍え死んだツバメが残る。石原さんは講演で、母親に本を読んでもらい、いつも泣いていた幼少の頃のエピソードを披露した

 ▼自己犠牲を惜しまない王子とツバメの「無償の愛」の物語は誰もが心を打たれる。「越冬つばめはどこにいますか」と問われたら、石原さんは「会津にいます」と答えるという。会津の優しい心が生んだ曲と知り、聞こえ方も違ってきた。