【11月4日付編集日記】シニアの挑戦

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 いわきが生んだ作家、吉野せいは幼い頃から文学に親しんでいたという。しかし、農民詩人の三野混沌と結婚して阿武隈山麓での開墾生活を始めたことで、家族の暮らしを支えるために文筆活動から遠のいた

 ▼再び筆を執ったのは夫が亡くなった後で、せいは70歳を過ぎていた。あふれる思いをぶつけるように、せいは書いた。青春時代の思い、開墾生活の理想と現実、夫婦間の葛藤―。その作品が読者の心を打つのは豊かな人生観が文章ににじみ出ているからだろう

 ▼先日、せいを顕彰する文学賞「吉野せい賞」の選考結果が発表され、いわき市の酒井正二さんの「草の露」が最高賞に選ばれた。酒井さんは87歳。「これからも文筆にいそしみ、豊かな余生を送りたい」との受賞コメントが印象的だった

 ▼若々しいシニアが増え、年を取ることに対する意識は変わってきている。博報堂の調査では、60代の9割が「シニアと呼ばれたいとは思わない」と答えたという。いつまでも活動的でいたいという思いの表れだろう

 ▼新しいことに挑戦するのは、いくつになっても遅くはない。今日は、せいの没後40年。今もみずみずしい文章を読み返し、生きがいを持つことの大切さを改めて考える。