【11月9日付編集日記】鍋とざく

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 「鍋はぐつぐつ煮える」。森鴎外の短編の中で最も完成度の高い傑作であるとも評される「牛鍋」の書き出しである。シンプルな描写が余計に食欲をくすぐる

 ▼朝晩の気温もぐっと下がり、鍋料理が恋しい季節になった。ミツカンの「鍋定期調査」によると9~2月の鍋シーズンに鍋を囲む回数は11~20回とする家庭が3割を占めるが、61回以上という"強者(つわもの)"も。3日に1度は鍋料理という勘定になる

 ▼「鍋の魅力」を聞いた問いでは「野菜がたくさん食べられる」「野菜がおいしい」が1、2位を独占、3位に「体が温まる」が続く。暖房が行き届いた現代は、体の芯を温める鍋から、体に良い鍋へと変わってきたらしい

 ▼厚生労働省は、生活習慣病を予防し、健康な生活を維持するための目標として、成人1日当たりの野菜の平均摂取量を350グラム以上と定める。しかし実際に目標を達成できているのは男女ともに3割程度というのが現状だ

 ▼さて「牛鍋」に登場する野菜は「ざくと云(い)う名の葱(ねぎ)」で、「白い処が段々に黄いろくなって、褐色の汁の中へ沈む」と実にうまそうだ。〈鍋囲む味は自慢の自家野菜〉(みんゆう世相川柳)。今夜は野菜をたっぷり入れてお好みの鍋をどうぞ。