【1月10日付編集日記】幸田露伴

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 人気作家として明治期に注目された幸田露伴が約120年前に見たいわき市の久ノ浜駅周辺は、鉄道建設に携わる人たちの熱気にあふれていた。「物売る店、飲み食いする家も多くなりし」と紀行「うつしゑ日記」で書いている

 ▼露伴が同駅を起点に波立寺や波立海岸を訪れ、思いをはせたのは平安末期の歌人、西行が「波立の寺」と詠んだ短歌だった。時代を超えて西行と同じ地で眺めた情景に「むかしは如何なり」と書いた露伴の言葉には感慨がにじむ

 ▼同市の住民団体「久之浜・大久地区復興対策協議会」がJR久ノ浜駅120周年を記念し、同駅で開いている絵画・資料展「久之浜を訪れた文人たち」では露伴など駅に縁があった著名な文化人を紹介している。地域資源でもある駅の役割を再認識してもらうのが目的だ

 ▼同展では文化人らの足跡をたどる資料や、いわき明星大美術部の学生が描いた絵で、駅と地域にまつわる歴史も解説しており、住民が地元に理解を深める機会にもなりそうだ

 ▼汽車に揺られて旅した露伴は各地を歩き、歌枕になりそうな自然風景や文化財などを紀行に記している。地元の駅を見直してみることは地域に根ざす歴史や文化を再発見する契機になる。