【6月9日付編集日記】森の記憶

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 「森林には世の中の文明や文化など、人間の生み出したあらゆることが投影されている。『森の記憶』と呼んでいいのではないか」と、林学者で山形大農学部長を務めた北村昌美さんが本に書いている

 ▼北村さんは、具体例として戊辰戦争の戦いの場となった山形県庄内町の最上川近くにある杉林を挙げるが、森の記憶の本質は、心の部分など形に表れないものを含め全てを森林が包み込んでいることだと指摘する

 ▼本県は森林が県土の約7割を占め、全国4番目の広さを誇る「森林県」だ。森林は水を蓄え、空気をきれいにし、土砂崩れを防ぐ。動物のすみかであり、木材などの生産の場でもある。県民の暮らしに深く結び付いたまさにいのちの森だ

 ▼その本県であす、全国植樹祭が開かれる。県内では48年ぶりの開催で、東日本大震災と原発事故後、被災県で初めて行われる植樹祭である。来年4月に退位を控える天皇、皇后両陛下が出席される最後の植樹祭となる

 ▼千年に一度の大災害に見舞われた本県の森林と県民の心に刻まれた悲しい記憶を一つ一つ、夢や希望あふれる記憶へと変えていく。そして、緑と花いっぱいの県土を次世代に引き継いでいくための新しい出発点になる。