【6月10日付編集日記】森を渡る風

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 築十数年、同世代の民家が並ぶニュータウンは今、そこここで外回りに足場が組まれ、屋根、壁の修繕ラッシュだ。隣近所で始まれば気になるもので、「どこの業者がいいですかね」と情報交換に花が咲く

 ▼解体と再生が一段落しつつあるのか、手のすいた業者たちはにぎやかにピンポンと鳴らす。かくして、わが家にも足場が組まれ作業が始まった。日射や大風、放射能を帯びた雨からも家族を守った家を手入れする

 ▼とは言え、窓を閉め切った閉塞(へいそく)感は息苦しくて耐え難い。あの日、見えない放射性物質におびえ家中の窓や換気口、隙間まで閉め切って以来の密封生活。出勤と水くみ以外は家にこもった数日間が思い起こされる

 ▼塗料臭が落ち着いたところで窓を開け放ち、風を呼び込んだ。フレッシュな空気を鼻いっぱいに迎え入れる。そういえば7年前も、森を渡ってきた西風に「いつまでも吹き続けてくれ」と願う人が多かったと聞く

 ▼今は風向きに一喜一憂することもなくなった。風化や風評には悩む本県だが、さわやかに吹く風はありがたい。空気を変えたのは時であり、苦難に立ち向かう県民であり、風を運び入れた県外支援者たちだろう。きょうは東を向いて感謝を思う。