【7月4日付編集日記】風鈴

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 物理学者で随筆家の寺田寅彦は、夏の暑いさなかに感じる「涼」は、「日本人だけの感じ得る特殊な感覚ではないか」と著書に書いている。外国では、そうした感覚を経験したことがなかったという

 ▼寺田が日本的な涼しさとして挙げているものに、夕立に洗われた庭の風景などとともに風鈴がある。機械仕掛けではなく、自然の風に吹かれて鳴る不規則な音色だからこそ、涼しさを届けることができるというのが、寺田の見立てである

 ▼会津の蒔絵(まきえ)技法を用いた「蒔絵風鈴」を作っている喜多方市の漆器店で、職人たちが絵付け作業に追われている。今年は風鈴の追加注文が多いという。暑さが厳しいことや全国の風鈴市などで需要が伸びていることが要因のようだ

 ▼同店によれば、卓上に置いて楽しむ風鈴の注文も増えている。つり下げる場所に困ることなく、音の大きさも聞く人との距離を考慮して作られているため、隣近所の迷惑になりにくいというのが人気の理由らしい

 ▼「風鈴に涼しき風の姿かな」。寺田と交流があった俳人、正岡子規の作品である。今年は例年にも増して暑い夏になりそうだ。時代を超えて親しまれてきた風鈴の音を楽しみながら日本の涼を感じてみようか。