【7月8日付編集日記】福西本店

  このエントリーをはてなブックマークに追加 

 余計な物を思い切って捨てる断捨離という言葉が広く使われるようになった。「おかげで部屋が片付いた」「重荷から解放され気持ちがスッキリした」という人も多いだろう

 ▼その一方で、わが国には「もったいない」という考え方が古くから美徳として存在する。どちらを選択するかはケース・バイ・ケースだろうが、頭を悩ませることも少なくない

 ▼会津若松市に先月開館した商業文化施設・福西本店は後者だ。明治後期から昭和初期にかけて繁栄した豪商・福西家の母屋や蔵を改修し、一般公開した。解体の選択肢もあったが、地元有志らが「何とか残したい」と立ち上がり、1億円以上をかけて再生した。黒漆喰(しっくい)の蔵の輝きが往時の栄華をしのばせる

 ▼内部の繊細な作り込みにも見学者が舌を巻く。「今となっては、お金をかけても作れそうにない」。「残す」という選択が正しかったかどうかは今後の効果次第だが、会津の財産が土俵際で踏ん張ったと言っていいだろう

 ▼歴史的な建造物に限らず、県内各地には他にも磨けば光るお宝が眠っていそうだ。断捨離のスッキリ感も理解できるが、もう一踏ん張りして「もったいない」を実践すれば思わぬ効果をもたらすかもしれない。