【7月12日付編集日記】宇宙旅行

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 地平線そのものは帯状に白くかすんでいた。その上の空は淡青色で(中略)見える範囲でいちばん高い角度では、空は非常に暗かった」。米陸軍将校アルバート・スティーブンズは成層圏からの眺めをそう記した(「大冒険時代」早川書房)

 ▼1935年11月11日、高度は約2万2千メートルだった。その約4年前、世界初の成層圏到達を実現したスイスの冒険家オーギュスト・ピカールを含め、30年代は有人宇宙開発の出発点といわれる。乗り物は飛行機でもロケットでもなく気球だった

 ▼ガス気球(風船)を高高度まで飛ばして宇宙の撮影に取り組んでいる岩谷技研(郡山市)が、淡水魚を入れた水槽を高度約2万5千メートルの成層圏まで打ち上げ、生きたまま帰還させる実験に成功した

 ▼白い雲に覆われた地球と、淡い青から限りなく黒に近い紺色まで美しいグラデーションを描く空。公開された映像は手前で泳ぐ赤い観賞魚を除けばスティーブンズの描写そのものだ

 ▼同社は2022年までに人を乗せた成層圏飛行を目指している。「成層圏への旅を冒険ではなく日常のものにしたい」と社長の岩谷圭介さん(32)。残る課題を一つずつ解決して、福島発の「宇宙旅行」をぜひ実現させてほしい。