【7月14日付編集日記】土偶と縄文の心

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 その像の前で若い男女が立ち止まり、手をつなぎながら時間を忘れたように見入っている。見る人を優しい顔にさせる不思議な力。東京・上野の東京国立博物館平成館で開催中の特別展「縄文―1万年の美の鼓動」を観覧していて、ほほ笑ましい場面に出会った

 ▼視線の先には福島市飯坂町の上岡遺跡から出土した国重要文化財「しゃがむ土偶」。おなかの大きな女性が座し、腕を組んだポーズ。昔、座して子を産んだ時の姿という説や、祈りの形という説など諸説語られる

 ▼普段は福島市のじょーもぴあ宮畑に展示され、今回は国内外の秀逸な縄文期出土品約200点の一つとして招かれた。宇宙服を着たような遮光器土偶など人気の土偶も多数並ぶ中で、人の足を止める魅力は注目だ

 ▼地元・東湯野地区では郷土の誇りを次代の担い手に知ってもらうため、子どもたちが思い思いのレプリカを作る取り組みが始まっている。母の胎内で育まれる命。縄文の人々が感じた神秘を共有する意味は大きい▼東京展示は9月2日まで。10月からは海を越え、パリで日仏友好160周年記念事業の一翼を担う。福島の地で生き続ける人々の健やかなる姿とメッセージを、その妊婦像に託してみたい。