【7月16日付編集日記】森のささやき

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 「年を重ねたボコボコの木肌や直角に曲がった幹は木の履歴書だ。この木はどんな人生を送ってきたのかと想像して描いている」。昨秋、本県を訪れた脚本家の倉本聰さんはライフワークである点描画への思いを本紙に語った

 ▼倉本さんはこれまで、北海道・富良野や旅先で心ひかれた木々を見つめ、その一本一本にドラマを見いだしてきた。スケッチブックに細いペン先で無数の点を打つ繊細な作品は独特の世界観を醸し出している

 ▼その作品や倉本さんのこれまでの仕事を紹介する「森のささやきが聞こえますか―倉本聰の仕事と点描画展」が福島市で始まった。100点を超す点描画や代表作「北の国から」で使ったセットなどが並ぶ

 ▼会場には倉本さんが富岡町・夜の森で描いた桜の木の点描画も特別展示された。原発事故に伴う全町避難で誰もいなくなった町に取り残された桜の木たちのつぶやきを描いた作品の数々は本紙に掲載され感動を呼んだ

 ▼「樹に涙あり 樹に笑顔あり 樹に怒りあり 樹に履歴あり」。倉本さんが木の心情や生い立ちを想像しながら描いていると、木々が話し掛けてくるのだという。並んだ作品からどんなささやきが聞こえるか。耳を澄ましてみたい。