【8月7日付編集日記】立秋

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 遅すぎず、早すぎず。南北に長く、各地域で気候も異なる日本列島で、子孫を残すために絶好のタイミングで目覚めるコツを身に付けた昆虫がいる。自然界屈指の演奏家、エンマコオロギである

 ▼昆虫学者の正木進三さんは、南北のエンマコオロギの生態を比較した結果、北で産まれた卵は眠りが浅く、南で産まれた卵は眠りが深いことを突き止めた。卵は春先の一定の温度で成長を始め、秋の繁殖期に合わせて成虫になる必要がある。暖かい南では早く目覚めすぎないように、夏の短い北ではすぐに目覚めるための適応だという(「昆虫の生活史と進化」中公新書)

 ▼福島地方気象台によると、今年の本県のエンマコオロギの「初鳴」は今月3日に観測されたそうだ。およそ昨年並みだが、平年と比べると12日ほど早いタイミングになっている

 ▼きょうは立秋。暦の上では秋に入った。「秋とは名ばかり」と言われることが多いが、東北地方に雨を降らせている前線の影響で猛暑が緩み、いささか秋の気配を感じることができる天候になりそうだ

 ▼しかし、油断は禁物。残暑は続く見通しだ。アブラゼミの大合唱がエンマコオロギのささやきに切り替わるまで、熱中症対策に怠りなきよう。