【8月8日付編集日記】根子町人形

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 江戸時代の庶民の旅は寺や神社の参拝に合わせ、道中の名所を巡る観光も盛んだったと言われる。民俗学者の神崎宣武さんは当時の日本について「世界で冠たる『旅行大国』であった」と著書で評している

 ▼旅をする庶民が増えるとさまざまな土産品づくりが各地で盛んになった。神崎さんによると、徒歩で旅をした当時の土産品は持ち運びが楽で、付加価値が高い品が好まれ、手工芸品などが主流だった

 ▼福島市清水町に江戸時代から伝わる土人形「根子町(ねっこまち)人形」もその一つで、奥州街道を旅する人の土産品として人気を集めた。根子町宿として栄えた当時を物語る人形だが、いつしか作り手がいなくなり、「幻の土人形」と言われるようになった

 ▼根子町人形を紹介する写真展がきのうから同市で始まった。福島市教委が同人形を知ってもらおうと企画し、実物も展示した。18日まで開かれる。素焼きの土人形に和紙を張り、彩色された作品はかわいらしく絵画的でもある

 ▼同人形の愛好会の世話役の一人は「人形は地元の誇り。素晴らしさを多くの人に伝えたい」と話す。旅人たちに愛され、地域の文化を育み彩った根子町人形は、時代を超え今につながる先人からのお土産でもある。