【8月11日付編集日記】森の時計

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 東北新幹線の上野―大宮間で防音工事が行われている。市街地で新幹線の速度を上げるためには騒音対策が必要だからだ。JR東日本によると、工事が完了すると同区間の所要時間は最大1分程度短縮できるという

 ▼新幹線を利用する身としては1分でも早く目的地に到着できるのはありがたい。そう思っていたところ、本の中にハッとする一文を見つけた。「ヒトはどうしてこんなに急ぎ、スピードを善として賞讃するのか」

 ▼著者は脚本家の倉本聰さんだ。倉本さんは「ヒトがどのようにスピードを速めようと、自然のスピードは無関係に千年一日おっとりと時を刻み、(中略)天体は一律の速度で回転する」と書き、スピードを追求する現代人に疑問を投げかける

 ▼きっと、絵にもその思いを込めたのだろう。春に若い芽を出し、深緑の夏を過ぎ、秋には紅葉に彩られ、冬は雪に包まれて眠る。倉本さんの点描画展で鑑賞した絵には、森の木々がゆっくりと時を刻む姿が描かれていた

 ▼作品にはクマやシカ、リスなど森の住民らも登場する。その目は「そんなに急いでどうするの」と語っているかのようだ。時間に追われがちな日常をしばし忘れ「森の時計」に思いをはせるのもいい。