【11月9日付編集日記】朝河貫一

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 歴史学者の磯田道史さんを取材した時学生時代の武勇伝を聞いた。母校の慶応大の図書館にこもり歴史資料を読むのに没頭した揚げ句倒れ、救急車で運ばれた。図書館に救急車が入るのは大学始まって以来だったという

 ▼歴史を研究する人々にとって、資料の充実した図書館は、まさに宝庫だろう。早稲田大の研究者が中心となり10日発足する「朝河貫一学術協会」も、そんな宝庫を拠点の一つに研究を進めるという。宝庫とは福島市の県立図書館だ

 ▼朝河貫一は二本松出身で、米・イェール大教授などを務めた歴史学者。日清、日露、さらに二つの世界大戦が起きた「戦争の時代」に日本の行く末、世界の未来に警鐘を鳴らした人物として知られる

 ▼彼が残した約2800点の書簡やメモ類が、同図書館に所蔵されている。ただ所蔵資料の研究は、詳しい目録が近く完成する段階にとどまっており、発足する協会での本格的な研究が期待される

 ▼同時に協会発起人の一人甚野尚志早稲田大文学学術院教授は、福島高の出身だけに「身近に研究拠点がある故郷の若者にこそ、朝河の思想を学んでほしい」と言う。救急車は勘弁だろうが、知の宝庫を生かす情熱的な後輩たちへの期待は大きい。