【3月14日付編集日記】フラガール

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 「人生には負けられない時ってのがあるの。降りられない舞台があるの」。2006年公開の邦画の脚本をめくりながら、このセリフで目が留まった。公開された映画には出てこないセリフだ

 ▼勝負にこだわる熱血スポ根ドラマなら似たようなセリフは珍しくないのかもしれない。映画でカットされたのはそのためか。ただ、この映画が、いわき市の実話を基に作られた作品だったこともあり素直に胸に響いた

 ▼題名は「フラガール」。炭鉱閉山後の地域再生を模索するいわき市での常磐ハワイアンセンター(現スパリゾートハワイアンズ)とフラガールたちの誕生を描きヒットした。幻のセリフはハワイアンズをPRする全国キャラバンの場面に出てきた。松雪泰子さん演じるダンス教師が未熟な教え子たちを鼓舞する言葉だ

 ▼映画が描いた時代の四十数年後、現実の世界でフラガールたちは再びキャラバンに出た。東日本大震災と原発事故で被災した故郷の再生のためその願いを届けた

 ▼今年、フラガールは三たびキャラバンへ出る。前回の経験者が少なくなり、当時の復興への思いを引き継ぐためという。「負けられない時」は続いている。旅の知らせが、それを思い出させてくれた。