【9月23日付社説】自然保護の新税制/地方の視点忘れず具体像を

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 中央省庁や一部の政治家だけでなく、多くの人々が話し合う場を設け、地方の視点も取り入れながら、制度の具体像を探るベきだ。

 環境省は、国民が自然保護のための費用を負担する「森里川海協力資金制度(仮称)」構想を打ち出した。環境破壊や乱獲などで劣化が進む森林や河川、海を守り、育てることが目的で、新たな税制の創設を視野に入れている。

 森林など自然資源は、二酸化炭素(CO2)吸収や水質浄化、防災や水資源維持など多くの恩恵をもたらす。しかし経済的価値は十分に評価されておらず、自然破壊が進む背景の一つになっている。

 構想は、自然の恵みを評価して受益者が対価を支払い、その資金を生態系の維持や保全、再生のために使う「生態系サービスへの支払い(PES)」と呼ばれる仕組みの導入が柱。自然の恵みを次世代に引き継ぐための先進的な提案として注目される。

 豊かな森を維持していくためには植林や人工林での適切な間伐などが欠かせず、水辺の自然を生き返らせるためにはコンクリートの護岸を自然に近いものに替えるなどの事業を進める必要がある。

 PES制度は、これらの資金を確保するための仕組みとして世界的に注目されており、中米のコスタリカなどで成果を挙げている。

 国内では、本県の「森林環境税」や栃木県の「元気な森づくり県民税」、横浜市の「みどり税」など地方自治体が国に先行する形でこの種の制度を広く導入している。

 環境省は、国民が1人当たり1日1~2円程度の税金を負担し、企業にも一定の支払いを求める「広く薄い」税金の導入を検討中で、この制度を通じて自然保護を国民運動として進めたい考えだ。

 制度の導入は、地球温暖化対策上も、生物多様性保護上も、森林の劣化に歯止めをかけ、人口減少や高齢化が進む地方の再生につながる可能性を持っている。

 しかし、導入までには課題も多い。新税の導入には慎重でなければならないし、税金の使い道や無駄遣いに社会の厳しい目が向けられていることへの配慮も必要だ。

 本県の森林環境税は導入して10年になる。2014年度の県民アンケートでは、95%が「(税を)継続すべき」と答え、09年度の92%を上回ったが、税の認知度は54%から39%へと低下している。

 国の制度の導入に当たっては、地方自治体の制度との関係の整理はもちろん、国民が継続して自然保護に関心を持ち、税の必要性を理解して協力できるような工夫と情報発信が求められる。