【9月25日付社説】復興牧場スタート/挑戦と成果を再生の手本に

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「復興牧場」の取り組みが、本県の酪農の再生とともに、大規模共同経営方式のモデルケースになるよう期待したい。

 東京電力福島第1原発事故で避難、休業を余儀なくされた相双地方の酪農家5人が、再起を目指し共同運営する復興牧場がきょう福島市に完成、10月から稼働する。

 原発事故の影響を受けて、県内では酪農家約520戸のうち76戸が避難、休業した。事故から4年半がすぎたが、営農を再開した農家は13戸にとどまる。

 加えて、高齢化や後継者不足、大雪など自然災害による牛舎破損もあって、小規模農家の廃業が相次いだ結果、酪農家は約360戸まで減少。生乳生産量は2014年度で約7万2000トンと、事故前の10年度に比べて約8割の水準にとどまっている。

 復興牧場の取り組みが成功すれば、避難中の酪農家や、経営上さまざまな課題を抱える酪農家の希望の光となるだろう。一日も早く事業を軌道に乗せて、酪農家の営農再開や経営改善のけん引役を担ってほしい。

 復興牧場は、県酪農業協同組合が3.6ヘクタールの敷地に牛舎3棟、飼料庫などを整備し、酪農家5人が設立する牧場運営会社に貸し出す形をとる。大型の搾乳装置を備えて580頭の乳牛を飼育し、年間5000トンの生乳を生産する計画だ。

 乳牛580頭を飼育する牧場は県内最大で、東北でも五指に入る規模だ。複数の酪農家による大規模共同経営方式のモデル事業に位置付けられる。最善の経営手法を確立して、成果を県内さらには全国へと広げてもらいたい。

 酪農は県内だけでなく全国的に厳しい状況にある。小規模家族経営が多く、高コスト体質で収益性が低い。労働時間が長く、休みも十分に取りにくいなどの理由で、若い世代に敬遠されがちで、後継者不足に追い打ちを掛けている。

 復興牧場が取り組む大規模共同経営方式は、低コスト生産が可能となり、所得向上や労働条件改善による労働時間の短縮、休日の確保などに効果が見込まれる。

 復興牧場では、来年夏に予定されるフル稼働時には役員5人に加えて、社員6人、パート7人という体制を整え、シフト勤務ができるようにするなど、先進的な取り組みにも挑んでいく。

 本県の復興や農業再生には担い手となる若者らの古里への帰還や新規就農が欠かせない。より多くの若者たちが、酪農をはじめとする農業に就いて働きたくなるような労働環境づくりの手本に復興牧場がなることを望みたい。