【10月7日付社説】TPP大筋合意/農業の強化は待ったなしだ

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 太平洋を囲む巨大な自由経済圏を生み出す環太平洋連携協定(TPP)交渉の大筋合意により、日本の農産物市場の門戸はかつてないほど開かれることになる。

 輸入農産物との厳しい競争にさらされる国内農業の強化は待ったなしだ。足腰の強い体質に変える機会としなくてはならない。

 交渉の焦点となっていたコメ、麦、牛・豚肉、乳製品、サトウキビなどの甘味資源作物の重要5品目は、関税の撤廃が避けられた。

 しかしコメについては無関税で輸入する特別枠を新設することが合意条件になった。乳製品や甘味資源作物でも低関税の輸入枠が設けられる。麦については関税に相当する輸入差益が、牛・豚肉については関税そのものが、それぞれ大幅に削減されることになる。

 国内で輸入農産物が安く手に入るようになれば、国産農産物の価格を下げる圧力になり、生活を農業所得に頼る農家が大きな痛手を負うことになりかねない。

 政府は国内農業への影響を抑えるための強化策を作るとしている。まずは、どのような影響が出るのかをしっかりと精査することが肝要だ。

 本県にとって農業は、年間の産出額が2千億円を超える基幹産業の一つだ。しかも、コメや野菜などの農作物の生産をはじめ畜産など、沿岸部から山間部にわたって多彩な農業形態がある。

 政府はこれまでもTPPを見据えた国内農業の改革に取り組んできた。稲作を例に取ると、農地の集積による大規模経営化を進めるが、県内の中山間地域などでは、小さな田んぼを維持するだけで精いっぱいの農家が多い。

 政府が「強い農業」の確立を目指すのであれば、地方の多様な農業経営の形を考慮した強化策が不可欠だ。地方で農業離れが進み農地が荒廃すれば、環境保全に果たしている多面的な機能も失われることを忘れてはならない。

 農家も努力を続けている。生産者が農産物を自ら売って稼ぐ農業の6次化や、品質やブランド力の向上などの取り組みを盛り上げることも強化に欠かせない。

 そのためには、本県の農業が抱える事情を考慮しなければならない。政府を挙げて県産農産物の風評払拭(ふっしょく)を優先すべきだ。

 少子高齢化から人口減少に向かい、内需が先細りする日本が経済成長を維持していくためには、貿易や投資をこれまで以上に活発にすることは避けられない。

 政府にはTPPの意義を丁寧に説明し、協定発効に理解を求めることが必要になる。