【10月9日付社説】ノーベル賞連続受賞/裾野の広さと底力示す快挙

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 相次ぐ受賞決定は、日本の科学や医学研究の裾野の広さと底力を世界に示すものだ。

 今年のノーベル医学生理学賞に大村智・北里大特別栄誉教授、物理学賞に梶田隆章・東京大教授(同大宇宙線研究所長)の受賞が、それぞれ決まった。2人の快挙を心から喜びたい。

 大村さんは、ゴルフ場の土の中にいた微生物から、寄生虫が引き起こす感染症に効果がある物質を発見。それが抗寄生虫薬「イベルメクチン」の開発につながり、失明を招くオンコセルカ症や、皮膚が硬くなるリンパ系フィラリア症など熱帯病の特効薬として、多くの人々を救った。

 途上国ではエイズ、マラリア、結核の「三大感染症」に加えて、「顧みられない熱帯病」と呼ばれる一群の病気が猛威を振るう。

 国際社会は一丸となって、この問題に取り組んできたが、まだ力が足りない。受賞決定を機に、世界の健康問題への関心が高まり、研究が加速するよう望みたい。

 梶田さんは、宇宙に存在する最も基本的な粒子の一つ「ニュートリノ」に質量があることを見つけた。重さがないと考えられていた物理学の常識を覆す発見だった。

 梶田さんが見つけたのはニュートリノが飛んでいる間に別の種類に変身してしまう「振動」という不思議な現象だ。変身するのは質量を持つ証拠とされる。

 ニュートリノの存在を初めて捉えた小柴昌俊さんは、梶田さんの恩師で2002年の物理学賞を受賞した。「何の役にも立たない」(小柴さん)といわれるニュートリノ研究だが、私たちはなぜ存在するのかという根源的な問いに答えてくれる。宇宙の成り立ちの解明に向けて、貴重な発見を重ねてもらいたい。

 日本人のノーベル賞受賞は2年連続で計24人となる。このうち01年以降の自然科学系の受賞は15人に上る。受賞が相次ぐのはうれしいが、受賞業績の多くは科学技術立国として経済に勢いのあった1980~90年代に投資した研究が花開いた形だ。

 近年は、日本の科学研究の存在感の低下が指摘されている。先達たちが積み上げてきた実績をどのように引き継いでいくか。連続受賞に楽観することなく、長期的視点に立ち施策を練る必要がある。

 大村さんは山梨大、梶田さんは埼玉大と、地方の国立大出身であることにも注目したい。たゆまぬ努力と一定の環境があれば、チャンスは均等にあることの証しだろう。県内から世界に貢献できる若者たちが育つことを期待したい。