【10月10日付社説】子どもの内部被ばく/確認重ね不安を和らげたい

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 日常生活の中で、小さな子どもたちの体内に放射性セシウムが取り込まれる恐れがほとんどないことが、あらためて確認された。

 乳幼児向けに開発された専用のホールボディーカウンター(WBC)による内部被ばく検査の結果、受検した延べ2707人の乳幼児全員から放射性セシウムは検出されなかった。

 東京大医科学研究所の坪倉正治特任研究員らの研究グループが論文にまとめて発表した。論文は日本学士院紀要に掲載される。

 子どもたちが日常の食生活で口にする食品や水道水の安全性を再確認できた結果でもある。

 「小児や乳幼児の慢性的な内部被ばくは、ほぼゼロの状態を維持できている」というのが坪倉氏らグループの見解だ。原発事故によって引き起こされた内部被ばくへの過剰な心配や不安の緩和につなげたい。

 WBCの検査は、体内に含まれる放射性物質が現状でどの程度かを調べる。通常のWBCは大人のサイズのため体の小さい子どもの測定では誤差が生じていた。

 乳幼児専用WBCは、子どもの体に合わせて検査ができるように開発され、検出限界値が通常のWBCよりも6分の1程度に引き下げられた。

 論文は専用WBCを導入している平田村のひらた中央病院、いわき市のいわき泌尿器科病院、南相馬市の市立総合病院の3病院で、2013年12月から15年3月にかけて検査を受けた0~11歳(当時)の結果をまとめたものだ。

 検査を受けた子どもたちの居住地は南相馬市やいわき市、郡山市、三春町など。検査と合わせて実施した保護者へのアンケートでは、県産のコメや野菜、水道水を避けている割合が三春町で4%だったのに対し、南相馬市では57%だった。

 セシウムが検出されなかった検査結果とアンケートの結果から、研究グループは「県産農産物や水道水を避けることと、内部被ばくとの相関関係は認められない」と結論づけた。

 これまで適切に測定できなかった小児や乳幼児の検査が可能になり、結果が論文としてまとめられたのは日本で初めてという。放射線の健康への影響についての新たな知見の一つといえよう。

 重要なのは、子どもたちの生活にこうした知見をどのように生かしていくかということだ。検査を通じ、食品が汚染されていなければ内部被ばくもしないという確認の積み重ねが、過剰な不安を和らげるために必要になる。