【10月18日付社説】児童虐待の増加/地域で見守る環境づくりを

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 県内のある母親は1歳の子どもが泣く声にイライラし、子どもの指をふすまで挟んで骨折させた。虐待をした理由を聞くと「甘えたいのは私のほう」と泣きわめく。母親自身も幼いころ、親から養育を放棄される虐待「ネグレクト」に遭っていたという。児童精神科医の星野仁彦さん(福島学院大教授)が診た児童虐待の事例だ。

 県内4カ所の児童相談所(児相)が2014年度に対応した児童虐待の件数は、前年度に比べて100件多い394件で、過去最多となった。虐待通告があった子どものきょうだいも心理的虐待を受けた恐れがあるとして対応事案に加えたことなどが大幅増の一因というが、事態は深刻と言わざるを得ない。児童虐待を身近な問題と認識し、地域で子どもたちを見守ることが重要だ。

 児童虐待は、子どもの命や健康に危害を与える「身体的虐待」、言葉で脅したり無視するなどの「心理的虐待」、そして「ネグレクト」と「性的虐待」―の四つに分類される。14年度に児相が対応したのは心理的虐待が136件で、身体的虐待とネグレクトが各120件台、性的虐待13件だった。

 星野さんは、世代を超えた虐待の連鎖や、虐待を受けた子どもがうつ病になったり非行に走ったりする可能性を指摘し、「子どもだけでなく、親も何らかの形でSOSを発している。小さなサインを見逃さないことが大切」と話す。

 虐待を防ぐためには相談体制の強化が求められる。児相で養育相談や家庭環境の調査などを行う児童福祉司の数は、県内4児相で計40人。政府は児童福祉司の配置基準を人口4~7万人に1人としており、県内の数は基準内にある。

 ただ、児童福祉司は子どもたちの心身障害や非行など虐待以外の相談にも応じている。現場からは「虐待は複雑化しており、人手が足りない」との声が聞こえる。県には、よりきめ細かく十分な対応ができるよう現実に即した配置数の検討を求めたい。

 児相だけでなく市町村も虐待の通報先となっている。民生児童委員の活動や、乳児家庭訪問事業などを通し、虐待の早期発見につなげたい。虐待の防止に向けては互いの連携強化も欠かせない。

 虐待は、密室である自宅で行われている場合が多い。専門家は「統計上の数字は氷山の一角だ」と指摘する。虐待に関する通報や相談を24時間受け付ける全国共通ダイヤル「189」の運用も今夏から始まった。子どもを健全に育てる環境づくりに県民一人一人が関心を持つことが肝要だ。