【10月22日付社説】被ばく労災認定/安全に働ける基準と環境を

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 東京電力福島第1原発の廃炉作業に従事した後、白血病になった元作業員に対する労災認定は、厚生労働省が「労働者補償」の観点を重視した判断だ。

 原発事故対応の被ばくに労災が認められた初のケースになる。厚労省は1976(昭和51)年に定められた被ばくによる白血病の労災認定基準に沿って認めた。

 基準は、年間の被ばく線量が5ミリシーベルト以上で、被ばくから1年を超えて発症した場合、ウイルス感染など他の要因が明らかでなければ労災認定する―という内容だ。

 元作業員は、2011年11月から13年12月の間の1年6カ月にわたって福島第1原発を含め複数の原発で放射線業務に従事した。

 業務全体の被ばく線量は19.8ミリシーベルトでこのうち福島第1原発での業務の被ばく線量は15・7ミリシーベルト。

 福島第1原発では原子炉建屋の覆いの設置工事などに当たり、防護服の着用など必要な対策はしていたという。

 認定基準に照らし合わせれば、労災に当たるとの判断は妥当といえる。30~40年にわたり国を挙げて取り組む廃炉作業を円滑に進めるためには、現場で働く作業員への手厚い労災補償が欠かせない。

 白血病の労災認定の基準については労災保険法に沿って労働者への補償に配慮することが基本にある。このため原発事故前から、放射線従事以外に発症要因が明らかではない限り、基準を満たせば、労災認定するという流れにある。

 今回のケースで厚労省は「被ばくと病気との因果関係は明らかではない」としていることからも、労災認定は被ばくとの因果関係を科学的に証明するものではない。 白血病の発症にはさまざまな要因がある上に、100ミリシーベルト以下の低線量被ばくが健康へ与える影響は明確には分かっていない。

 厚労省も「(認定基準にある年間被ばく線量の)5ミリシーベルトを超えると、白血病を発症するということではない」と強調している。

 厚労省によると、「5ミリシーベルト」は基準ができた76年当時、放射線業務に従事していない一般の住民の被ばく限度が年間5ミリシーベルトだったことから採用されたものだ。 この「5ミリシーベルト」という数字だけが独り歩きするようなことがないよう注意する必要がある。作業員に動揺が広がらないよう白血病の発症リスクの境界ではないことを認識しなければならない。

 労災の認定基準とは別に、原発作業員の被ばく基準は現在、年間50ミリシーベルトとされている。被ばく線量の徹底管理と労働環境の整備が国と東電に求められる。