【10月23日付社説】福島市人口ビジョン/あまりに楽観的すぎないか

(数字はいいね)  このエントリーをはてなブックマークに追加 

 あまりにも楽観的な数字だと言えないか。福島市が「地方創生」に向けてまとめた人口ビジョン・総合戦略案で示した合計特殊出生率のことだ。

 特殊出生率は、女性が生涯に産む子どもの数を推計したものだ。案では2040年に「2・36」という数字を掲げた。13年の1.42から27年間で0.94を引き上げようという内容だ。そうなれば、市の人口は10年時の90%に当たる約26万3千人を維持できるとした。

 目標を高く掲げるのは結構だが実現可能性はどうなのか。手厚い子育て支援で知られるフランスが2・01であることを考えると、かなりハードルが高いと言える。県内では会津若松市と南会津町が40年までに2・2に上昇させる目標を立てている。しかし厚生労働省の人口動態統計(08~12年平均)で、出生率が県内59市町村中57位の低さにある福島市としては思い切った設定だ。

 福島市は、出生率の設定に際して、市民アンケートなどを踏まえ、未婚者や既婚者が理想としたり希望する子どもの数の平均を採用したとしている。

 市民の意見を聞き、その実現を目指すのは、行政の役割であり当然のことだ。しかし、人口ビジョンの策定に当たっては、少子化の大きな原因になっている未婚率の上昇や晩婚化など、市民の願望とは別に考慮しなければならない要因が数多い。

 そもそも政府が地方創生を掲げた目的の一つが人口減少の克服であり、人口ビジョンは地方創生に向けた施策を立案をするための基礎になることを再認識すべきだ。その上で、掲げた目標の実現に向けて具体的な施策を住民に示し、実行していく必要がある。

 これは福島市だけの問題ではない。人口ビジョンと総合戦略の策定に取り組んでいる県や他の市町村にも言えることだ。現実を見据えながら多面的な視点を持ち、策定に取り組むことが重要だ。でなければ今後の施策立案とその展開方向を見誤らせる恐れがある。

 本社が先月行った市町村長アンケートでは、地方版総合戦略について「自前で策定」としたのは19市町村にとどまり、39市町村は民間シンクタンクや金融機関、大学の支援を受けて策定、もしくは検討中との回答だった。

 政府は全ての自治体に戦略の策定を求めているが、小さな町村にとって大きな負担になっている。実効性ある戦略の策定、そして地方創生を実現するため、政府は自治体へのさらなる職員派遣などを含め支援や調整に努めるべきだ。