【11月10日付社説】土湯の再エネ事業/復興と地方創生のモデルに

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 地域固有の資源を再生可能エネルギーに生かし、それを新たな観光やまちづくりに結び付ける。

 福島市の土湯温泉街で進められているこうした取り組みを、震災と原発事故からの復興再生と地方創生のモデルとして発信したい。

 土湯温泉の源泉の一つで、湧き出ている温泉の熱を利用して電気を起こすバイナリー発電所が今月20日に竣工(しゅんこう)式を迎える。

 今年5月には、温泉街を流れる荒川の支流東鴉川に小水力発電所が完成している。二つの発電所は地元資本の復興まちづくり会社「元気アップつちゆ」(加藤勝一社長)が事業化した。

 旅館やまちづくりに関わる地元の人たちで企画立案した復興再生の柱に位置付けた事業だ。

 バイナリーは年間に一般家庭で約500世帯分、小水力は約160世帯分の発電が見込まれる。

 売電を目的としてはいるが、バイナリー発電では、設備を冷やした後の温水を利用して養殖事業を行う計画があり、小水力発電所には遊歩道が整備されている。

 観光で生きる土湯温泉の産業に結び付けるために発電事業の付加価値を上げ、他に例のない先駆的な取り組みによって人を呼び込もうという構想だ。

 土湯温泉は震災と原発事故で建物の倒壊、風評被害の打撃を受け、震災前には16軒あった旅館のうち5軒が廃業に追い込まれた。

 高齢化の進行も重なり、震災前に戻すだけでは温泉街の将来が見込めないとの危機感から、地元の人たちが知恵を絞ったのが、再生可能エネルギーによるまちづくりという復興再生の方向性だ。

 ただ、再生可能エネルギーは初期投資が負担になる例が多く、償却できるか、収益を生むかが、事業化のかぎを握る。適地の選定や利害の調整も課題になるという。

 その点、土湯温泉の再生可能エネルギーは高い事業性が見込まれる。バイナリーは源泉をそのまま使い、小水力は古くから整備されてきた砂防堰堤(えんてい)を活用している。

 もとからある自然や人工の構造物といった地域の資源に活用方法を見いだせば、再生可能エネルギーの開発可能性が広がる好事例と言えるだろう。

 これまでに多くの人たちが視察に訪れ、先週は発電事業を紹介するフォーラムが開かれた。全国から参加した事業者や自治体関係者を前に加藤社長は「土湯に来なければ体験できない状況をつくり、地域の事業として成り立つようにしたい」と語った。

 自分たちの手で復興を遂げ新しい地域をつくるという挑戦だ。