【11月13日付社説】高齢者の雇用保険/安全網全体を見渡し議論を

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 厚生労働省の審議会で雇用保険制度を見直す議論が本格化している。今回は、現在認められていない「65歳以上」の新規加入を可能とするかどうかが焦点となる。

 高齢者の雇用を促進する狙いからだが、雇用保険だけでなく生活保護など社会のセーフティー・ネット(安全網)全体の中で高齢者雇用をどう位置付けるのか、丁寧で納得のいく審議を望みたい。

 雇用保険の代表的な役割は、失業したときにそれまでの賃金に代わる手当を支給し、生活を支える点にある。原則として労働者を雇っている企業は保険に強制加入させられており、ほとんどの労働者が被保険者となっている。

 高齢者は、同じ企業で働き続ける場合は65歳以上でも継続加入できるが、65歳以上になって別の企業へ再就職した場合は保険に加入できない仕組みになっている。

 見直しのきっかけは安倍政権が打ち出した成長戦略だ。高齢者が「生涯現役で活躍し続けられる社会環境を整えていく」として、65歳以上への適用検討を明確に打ち出したからだ。

 しかし、雇用保険の適用拡大により高齢者の雇用が増えるかどうかは、はっきりしない面がある。

 一つには、現在働いている高齢者の相当数が同じ会社での継続雇用であり、65歳以上の働き手を新たに受け入れる職場は依然多くないからだ。これは働く側にも言えることで、長年勤めた「わが社」を離れて新しい職場へ挑戦する人は、まだ少数派ではないか。

 その上、企業側から見れば、これまで不要だった保険料の負担が65歳以上の新規雇用に発生することを意味する。かえって高齢者雇用を抑制する恐れもある。保険適用を拡大するならばこれらの点を曖昧にせず、審議の中で明確にしてもらいたい。

 高齢者の中で生活に苦しむ人が増えている。就業難や低年金などが背景にあり、このような高齢者への「最後の安全網」として生活保護が大きな役割を担っている。

 高齢者の生活を支える制度を拡充するならば、生活保護や自立支援など安全網全体の中での位置付けや機能分担の整理が不可欠だ。そこが不明確では新たな制度も十分な効果を発揮できないだろう。

 審議会では、現在労使が折半で負担している保険料率1%の引き下げも検討される。労使の負担軽減は歓迎したいが、柱の失業給付をはじめ育児休業や介護休業への給付で一段の拡充が社会的に求められていることを忘れてはならない。単純に、引き下げだけの議論で終わらせるべきではない。