【11月20日付社説】県の人口ビジョン/実現には覚悟と努力が要る

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 若い世代の希望をかなえる―とする国の地方創生戦略の趣旨に照らそうとすると、地方自治体が設定する人口目標は、理想的なものになってしまうということか。

 人口減少への対応では、まず国と地方が危機意識を共有することが大切だ。地方の厳しい現状を直視し、解決の可能性を探る冷静な視点が必要になる。

 地方創生の県版総合戦略の目標として、県が地域創生・人口減少対策有識者会議に示した「人口ビジョン」の素案を見ると、そう考えさせられてしまう。

 県の推計では、いまの193万人の県人口は、人口減少対策を講じずに現状のまま推移すれば、25年後の2040年には、147万人にまで急減する。

 この年の女性が生涯に産む子どもの数(合計特殊出生率)が14年の1.58から1.43に落ち込む見通しのため、それ以降の人口減少のペースが速まると予想される。

 そこで県が目標に掲げたのが、40年の出生率を2.16にすることだ。段階的に引き上げて社会増減ゼロを実現できれば、40年の県人口は162万人を確保でき、「経済の好循環やコミュニティーの維持が期待できる」としている。

 ただ、2.16という数字は高度経済成長期で3世代同居が多かった1970年と同じ数値になる。

 いまから45年前の水準に、これから25年間で戻せるのか。14年の出生率全国トップの沖縄県の1.86と比べてもはるかに高い。会議で有識者の中から、達成を疑問視する見方が出たのは当然だろう。

 県は県民アンケートで集計した既婚者や未婚者が望む「理想的な子どもの数」の2.76人を、算定式にはめて目標をはじき出した。

 目標の出生率は言い換えれば、県民の「希望出生率」だ。福島市なども市民の希望を参考にした結果、目標が高めに設定された。

 そもそも国は、地方創生で「若い世代の結婚・子育ての希望に応える」とし、希望出生率の実現を目指すことを、戦略の基本的な方向性に挙げている。

 国が目指すのは全国平均の出生率を14年の1.42から40年にかけて2.07にすることだ。

 戦略の策定を求められた全国自治体がそれに合わせようとするのは無理もない。ただ限られた財源が、実現性の薄い施策に振り分けられることがあってはならない。

 重要なのは目標達成へのしっかりとした工程と、地方の現状を踏まえた施策にどれだけ知恵を絞れるかだ。国も地方も、理想を実現するには、相当な覚悟と努力が要ることを忘れてはならない。